【現役外科医が解説】となりのナースエイド第3話(医療ドラマ)

医療ドラマ解説
出典:となりのナースエイド公式X

2024年1月から放送されたテレビドラマ「となりのナースエイド」を医師である私が解説します。

医療ドラマって面白くてついつい観てしまいますよね。ただ、医療ってなかなか馴染みのない世界なので、「これって実際の医療現場でもあり得るの?」とか、「ここよく分からなかったから詳しく知りたい!」とかって事ありませんか?

そのため、「となりのナースエイド」をゆるりと、正直に解説しようと思います。知識の補完として観てもらえたら嬉しいです。

この記事は、あくまで医療に関する内容の補填のため話の内容には触れませんが、一部にネタバレを含む可能性があります。そのため、ドラマを観てから記事をお読みください。

病気「シムネス」って?

実際にはそのような病気は存在しません。劇中では「全身性多発性悪性新生物症候群」として紹介されています。つまり、体中に癌が出来てしまう病気のようです。

実際にはそのような病気はありませんが、似たような病態はあります。

それは「原発不明癌多発転移」です。

癌は基本的に全身に転移していようと、原発巣(最初に癌ができた場所)の臓器の癌の転移として扱います。

なので、卵巣癌が全身に転移したのであれば卵巣癌の転移として卵巣癌のレジメン(治療計画)で抗癌剤治療を行います。

全身に転移していようが、癌細胞はもともといた臓器の性質を持つからです。なので、卵巣癌が肺に転移した組織を取ってきて顕微鏡で見てみると「肺癌」ではなく「卵巣癌」の顔付きをしているのが分かります。

しかしながら非常に進行が速い癌の場合、特定の臓器の特徴を持たない事があります。そのような癌を我々は「分化の悪い癌」といいます。

全身に癌が転移した状態で発見された時、それが「分化の悪い癌」であった場合、組織を取ってきて顕微鏡で覗いて「免疫染色」という癌の特徴を見極めるための染め物をしても、原発巣がどこか分からない時があります。

そのような癌の時には、病院では「キャンサーボード」と言われる色んな科の先生が集まるカンファレンスで相談して、最も癌が進行していそうな臓器を決定して、その臓器の転移として抗癌剤の治療を進めていくことになります。

だいぶ話が複雑になってしましましたが、「シムネス」は強いて言えばそのような病態に似ていると思います。

脳炎って本当に異常行動起こすの?

脳炎・脳症は異常行動を起こす事で知られています。

一番有名なのは小児のインフルエンザ脳症です。つじつまの合わない言動が見られたり、幻視・幻覚が起こったりするとされています。

後遺症が残る可能性もあるため、急いで治療が必要な病態です。

延命のために手術することってある?

基本的に末期癌の患者様には手術を行うこと自体が苦痛になってしまう可能性もありますし、全身が弱っている状態で手術を行うことで余計に余命を短くしてしまう可能性もあるため、末期癌の患者様に延命のための手術を行うことはありません。

なので、劇中にあるように延命のために「心臓手術」などの非常に侵襲の高い手術を行うことは基本的にありません。

ただし、生活の質(QOL)を改善するために手術を行う事はあります。多くは整形外科で癌による痛みを取り除く手術や、歩行などの機能を維持するためのものです。

これも、やはり患者さんにメスを入れることは苦痛や予後を短くするリスクを伴うので、放射線照射に代替できるものであれば放射線など侵襲の少ない方法を選択します。

まとめ

となりのナースエイド第3話の気になったシーンを現役外科医の目線で解説しました。

説明した通り、実際の医療現場と違った点もいくつかありますが、私はその事が悪いとは全く思いません。むしろ、医療を忠実に再現しすぎると地味で、ドラマの面白さが半減してしまいますから、実際と多少違っていても面白い方が絶対いいです。

今の医療ドラマは医療監修が必ず入っているので、制作側も医療現場との違いを分かった上で内容とのバランスをとって構成していると思います。

なので、今後も面白い医療ドラマをどんどん作って欲しいと思っています。

何かの参考になれば嬉しいです。

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