【現役外科医が解説】となりのナースエイド第2話(医療ドラマ)

医療ドラマ解説
出典:となりのナースエイド公式X

2024年1月から放送されたテレビドラマ「となりのナースエイド」を現役外科医である私が解説します。

医療ドラマって面白くてついつい観てしまいますよね。ただ、医療ってなかなか馴染みのない世界なので、「これって実際の医療現場でもあり得るの?」とか、「ここよく分からなかったから詳しく知りたい!」とかって事ありませんか?

そのため、「となりのナースエイド第2話」をゆるりと、正直に解説しようと思います。知識の補完として観てもらえたら嬉しいです。

この記事は、あくまで医療に関する内容の補填のため話の内容には触れませんが、一部にネタバレを含む可能性があります。そのため、ドラマを観てから記事をお読みください。

ナースエイドってどんな仕事?は第1話の解説でおこなっていますので、そちらも参考にしてみてください。

気になった点を解説

外科医って一人で色んな場所(臓器)の手術するの?

第1話で大動脈解離の手術と胸腔鏡下で葉切除、さらに脾蔵摘出を行なっていた大河ですが、第2話では膵頭十二指腸切除を行なっています。しかもロボット支援下の。さらにさらには小児の心肺同時移植という快挙を達成してしまってます。

通常ですと
大動脈解離: 成人心臓血管外科
肺切除: 呼吸器外科
脾切除、膵頭十二指腸切除: 肝胆膵外科
小児の心肺同時移植?: 小児心臓外科

が担当します。
膵頭十二指腸切除だけでかなりの難易度で、20代で指導医なしの執刀を出来る外科医がもしいるとしたらスーパードクターです。それもロボットで完遂してしまうなんて……

さらに、全領域の手術を完璧にこなす大河先生は凄すぎです。
凄すぎというか、やりすぎです。

昔は今のように細分化されておらず、肺の手術をする医者がお腹の手術をしたり、心臓の手術をする医者が肺の手術をすることは良くありました。

今でも地方の病院で外科医の少ない所だと専門外の手術を担当することはあるでしょう。でもそれは比較的簡単な手術だけです。

昔は傷を大きく開け手術が出来ましたが、今はそうはいきません。腹腔鏡や胸腔鏡を用いた出来るだけ傷を小さくする手術が主流となり、さらにはロボット手術も登場し手術がどんどん複雑化しています。

そのため、これだけあらゆる領域の高難易度の手術をこなしてしまう医者は存在しないと言えます。

また、ロボット手術はロボット手術執刀の資格(サーティフィケート)も別で必要です。国家資格ではないですが、学会が義務付けています。20代でその資格まで取ってしまう大河先生は凄すぎます。

このように、実際にはあり得ないスーパードクターですが、ドラマで実際の医療を忠実に再現すると一つの臓器の疾患しか出てこず、かなりマンネリ化した内容になります。

また肺癌の手術かーとか
この人も膵臓癌かーとか、
超絶つまらないドラマになります。

そのため、医療ドラマにはこういったスーパードクターは必要不可欠だと思います。

医者と看護師で一緒に食堂でランチするって実際ある?

少なくとも、私が勤めてきた病院ではありません。医者は医者だけでランチするか一人で食べる事がほとんどです。

そもそも看護師さんが、決まった時間に休憩に行けるか分かりません。その日の病棟の荒れ具合、検査や処置がどのくらい入っているか、入院がどのくらいいるかで、何時から休憩が回せるか分かったものではありません。約束するのは普通は不可能です。

食堂に一人でいるときに知り合いの看護師さんがいたら一緒に食べる事はあるかもしれませんが、「今日一緒にランチしよー」みたいな桃色の職場ではありません。

手術の説明って、失敗する可能性とかも必ず話すの?

「失敗」というと語弊がありますが、「合併症」の可能性は必ず話します。

そもそも一般に「失敗」と言われているものの多くは医療では「合併症」と考えます。

同じ名前の手術でも、患者さんによって癒着をしていたり、体格や解剖学的な違い等、全く同じ手術はありません。例えば、他の人より血管の壁がもろく、予想外に出血してしまうこともあります。これは失敗した訳ではなく、あくまで手術の合併症と考えています。

もちろん合併症を極力0にするために我々外科医も努力していますが、絶対に0にすることは出来ないので、起こりうる可能性のある合併症は事前に丁寧にお話しして、その合併症が起きたときはどのように対処するか説明します。

ドラマの中で大河先生が「出血したらお腹を大きく開ける」と話していたのは当然で、むしろその可能性の話をせずに手術をするのは大問題です。

手術を受けることを拒否される事って実際ある?

割とよくあります。

特にご高齢の患者様に多い傾向にあります。治療法は手術以外の方法(放射線治療など)も必ず提示して、どの方法が良いか考えていただきます。

大切な治療方法ですからその時の一時的な感情だけで決定してしまうのは良くありません。また、今後面倒をみるのは家族ですから、治療方法の説明はご家族の方にも同席していただいて、自宅でよく相談して治療法を決めていただきます。

ロボット手術って本当に傷が小さく済むの?それなら全部ロボット手術が良くない?

ロボット手術は確かにこれまでの手術を発展させる可能性があります。

ロボット手術のメリットの一部は以下の通りです。

  • 多関節:お腹や胸の中でアームの関節を曲げることができる。そのため小さい傷でお腹や胸の中に手を入れて手術をしている感覚。
  • 拡大視:術者は3Dで拡大視して手術が出来るので繊細な操作が可能
  • 手ぶれ補正:術者の手ぶれが補正されるため、細かい操作も可能

ただ、必ずしも良いことばかりではありません。

ロボット手術のデメリットの一部は以下の通りです。

  • 手の感覚がない:視覚だけに頼って手術をするため、手の感覚で危険を察知することができない(例:何か引っかかっている感覚とか)
  • カメラに映っていない場所では何が起きているか分からない:カメラに映っていない場所でアームが臓器などを傷つける可能性もある
  • 傷の数が増える可能性がある:手術によりますが、腹腔鏡や胸腔鏡手術より傷の数が多くなる事も多いです

ロボット手術は、外科系全体として普及させていきたい流れにあるのでメリットばかりが一人歩きしますが、デメリットも多いです。

よく「開腹手術・開胸手術と比較して」傷が小さく済む事を協調されがちですが、本当に比較すべきは「腹腔鏡手術や胸腔鏡手術」です。腹腔鏡手術や胸腔鏡手術と比較すると傷の数は多くなることが多いです。

ロボット手術が万能ではない点に留意して、よく話を聞いて手術法を決める必要があります。

ロボット手術については書くと長くなるので、いずれ単独の記事にまとめようと思います。

まとめ

となりのナースエイド第2話の気になったシーンを現役外科医の目線で解説しました。

説明した通り、実際の医療現場と違った点もいくつかありますが、私はその事が悪いとは全く思いません。むしろ、医療を忠実に再現しすぎると地味で、ドラマの面白さが半減してしまいますから、実際と多少違っていても面白い方が絶対いいです。

今の医療ドラマは医療監修が必ず入っているので、制作側も医療現場との違いを分かった上で内容とのバランスをとって構成していると思います。

なので、今後も面白い医療ドラマをどんどん作って欲しいと思っています。医療に関する情報は私が補完していきます笑

何かの参考になれば嬉しいです。

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