【現役外科医が解説】となりのナースエイド第1話(医療ドラマ)

医療ドラマ解説
出典:となりのナースエイド公式X

2024年1月から放送されたテレビドラマ「となりのナースエイド」を医師である私が解説します。

医療ドラマって面白くてついつい観てしまいますよね。ただ、医療ってなかなか馴染みのない世界なので、「これって実際の医療現場でもあり得るの?」とか、「ここよく分からなかったから詳しく知りたい!」とかって事ありませんか?

そのため、「となりのナースエイド」をゆるりと、正直に解説しようと思います。知識の補完として観てもらえたら嬉しいです。

この記事は、あくまで医療に関する内容の補填のため話の内容には触れませんが、一部にネタバレを含む可能性があります。そのため、ドラマを観てから記事をお読みください。

気になった点を解説

ナースエイドって?

看護助手や看護補助者といわれる職業で「助手さん」や「補佐さん」なんて呼ばれる事が多いです。正直、私は「ナースエイド」っていう呼びかたは初めて聞きました(自分が勤めてきた病院で呼ばなかっただけかも知れませんが)

確かに「隣の看護助手」なんてタイトルだったら怪しさ満点で観たくないですもんね。

仕事内容

ナースエイドには決まった国家資格は存在せず、医療行為はできません。そのため看護師さんの指示の元、看護師さんの仕事の補助や患者さんの身の回りのお世話をしています。

看護師さんの医療行為は「採血」や「注射」などがありますが、実際それらの仕事は看護師さんの仕事の中でもごく一部なので、実際の仕事内容は看護師さんもナースエイドもそこまで大きく変わらないこともあるようです。

どういう人が多い?

勤めている方のご年齢は、若い方もたまにいらっしゃいますが、子育てが終わったご年齢の方が多いです。

仕事上、看護師さんの指示で動くため、新人看護師さんがベテランのナースエイドの方に指示している光景は医者からみるとやや違和感がありますが、お互い敬意をもって敬語で話している事が多いです。

男女比は女性が圧倒的に多いですが、男性の方もいらっしゃいます。前の病院では男性のナースエイドの方が数人働かれていましたが、特に医療現場は女性が多く、力仕事も多いので、頼りにされている印象でした。

ナースエイドが医者に指示してくることはあるの?

経験上、まずないです。というか、ナースエイドの方と医者が関わる機会がまず少ないんです。上で述べたように、ナースエイドはあくまで看護師さんの仕事の補助なので、看護師さんとは密接に関わるもののナースエイドの方と直接話す機会はほとんどありません。

医者は基本的に看護師さんに指示を出して、その指示をナースエイドにやってもらうときは看護師さんがナースエイドに指示を出すなど、必ず看護師さんが間に入るからです。

実際に、私が今勤めている病棟でもナースエイドの方が何人か勤められていますが、恥ずかしながらお名前も存じ上げておりません。

「背中の痛み」で急性大動脈解離(解離性大動脈瘤)が見つかることなんてある?

ドラマの冒頭で、外来で腰を痛がっている患者さんの危険性を新人ナースエイド澪が指摘するシーンです。

これは、医師国家試験でも頻発の典型的な症状です。

「移動する背中の痛み」→「急性大動脈解離を疑って造影CT」は即答出来なければ医者になれません。

実際に私も外来で背中の痛みから急性大動脈解離を見つけたこともあります。

脊椎の圧迫骨折や筋の痛みと間違えられやすく怖い病気ですが、普通の背中の痛みは「この辺が痛い」と痛い場所を指し示す事ができ、その場所を押すと激痛が走るのに対し、大動脈解離の痛みは押しても痛みは強くなりません(大動脈は体表から触っても届かないため)。

若い先生が年配の先生より偉くなることはあり得る?

天才外科医の竜崎大河(29)が、あきらかに年上の猿田先生(49)にタメ口を使っているのが印象的でした。

基本的に医者は「医者何年目か」で立場があがる年功序列であることが多く、このように明らかに年数が上の先生にタメ口を使うことは見かけません。

ただ、若い先生が年数が上の先生より出世する事は良くあります。

医師の階級の一例は

大学病院: レジデント(研修医)→助教→講師→准教授→教授

一般病院: レジデント(研修医)→医員→副医長→医長→副部長→部長

のように上がっていきます。

出世するのに、治療に関する実績(手術の上手さなど)はあまり関係なく、論文や学会発表、学会での仕事の功績など対外的な仕事での評価が必要になります。

そのため、若い人がより出世することになることはあり得ます。ただ、講師(医長)くらいまでは年功序列で、枠が空いたら昇進するパターンが多いので、20代で准教授とか教授になった方は多くないと思います(というか私は一人も知りません)。

若い人の方が階級上出世したとしても、基本的には医者の世界で年数の上の先生にタメ口を使ったりする事はほとんどありません。

手術室にマスクも帽子も被らずに入っていいの?

主人公の新人ナースエイド、澪がマスクも帽子も付けずに手術室に乗り込んで手術を止めさせるシーンがありました。

絶対だめです笑

術野(消毒して手術する部分)に髪の毛が落ちたりしたら不潔ですし、人の唾には口腔内の常在菌が含まれるため、マスクも必須です。

手術が終わって患者さんがいない手術室ならまだしも、これから手術しようとしているところにマスクも帽子もなしに乗り込んだら2秒で放り出されます。

「その手術待っ・・・・」くらいで放り出されると思います。

手術室の入り口には緊急手術の際に医師がすぐ身につけられる様にマスクと帽子が完備されているので、着替える時間もなく緊急手術に入る際は部屋まで走りながらそれらを身につけて部屋に入る事になります。

実際手術の時って、手を上に上げるポーズするの?

こんな感じのやつです。実際にします。

これは、手術の前にした手洗いの水が肘側から手先側に流れてこないように、手を肘より高く上げているのです。

ただ、個人的には猿田先生の手の位置が高すぎるのが気になりました。手は肘より高く上がるのですが、顔の周りは不潔なので、顔の近くに手を持ってきてはいけないのです。

なので、この猿田先生の手の位置を研修医がやっていたら、もう一度手洗いからやり直させられると思います。

まとめ

となりのナースエイド第一話の気になったシーンを医者目線で解説しました。

説明した通り、実際の医療現場と違った点もいくつかありますが、私はその事が悪いとは全く思いません。むしろ、医療を忠実に再現しすぎると地味で、ドラマの面白さが半減してしまいますから、実際と多少違っていても面白い方が絶対いいです。

今の医療ドラマは医療監修が必ず入っているので、制作側も医療現場との違いを分かった上で内容とのバランスをとって構成していると思います。

なので、今後も面白い医療ドラマをどんどん作って欲しいと思っています。医療に関する情報は私が補完していきます笑

何かの参考になれば嬉しいです。

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